富士通アイ・ネットワークシステムズ株式会社

組織横断の社内ワーキングを
立ちあげ現場の課題をDXで解決!

南アルプス市内に所在する、富士通アイ・ネットワークシステムズ株式会社。同社は20年前から続けている「生産革新活動」を基に、現場とDX推進者が一体となったDX推進体制を作り、現場の課題解決に挑戦しています。
先進的な取り組みを多数実行しているDX推進室室長 武井氏と、実際にDXを現場で推進している爲國氏に、同社におけるDX推進の内容や経緯、今後の取り組みについて伺いました。

富士通アイ・ネットワークシステムズ株式会社

企業概要

 1960年に現在の南アルプス市に工場を新設した。富士通グループのネットワークプロダクトの製造拠点として、半世紀以上にわたり、数々の高度ネットワークソリューションを開発・製造・提供しています。現在では、従来から得意であったネットワークプロダクトの「ものづくり」に加え、国内・海外の各種ネットワーク製品への出荷保証やお客様毎のカスタマイズにお応えするサービスをマルチベンダーハブ&サービス(MVHS)で提供し、「ものづくり」と「サービス」の両方において高いクオリティを発揮する企業として進化を続けています。変化が多いICT社会、デジタル時代の環境下でも、ヒト・モノ・場所をいとわずタイムリーにカスタマイズできる体制で柔軟にお客様ニーズに応えています。

事例詳細:取り組み内容インタビュー

  富士通アイ・ネットワークシステムズ株式会社
     DX推進室室長 武井尚也 氏

――貴社のDX推進について教えてください。

武井室長:元々、(1)加工・(2)在庫・(3)作りすぎ・(4)手待ち・(5)動作・(6)運搬・(7)不良手直しにおける7つの無駄を失くす「生産革新活動」を20年以上前から進めていました。
この生産革新活動を加速するためにIoTやツールを活用して加速させることを目的として、DXを進めてきました。

 DXを進める体制としては、製造部と情報システム部門、生産製造技術部門のキーマンが集まって、ワーキング体制(社内呼称:DX-WG)を作り、各部門から上がってくる課題に対し施策を考えています。
それぞれの部門の得意分野があるので、互いに知恵を出しながら解決し合っている状況です。

 また、DX-WGの中には執行役員も参加しており、現場からの課題だけでなく、経営的な課題も含め、優先順位を決めて取り組んでいます。
最初にDXに取り組んだのは、自社の製造工程の要となる「自動実装ライン※」です。
※電子回路を作る土台となるプリント基板を作成する工程 

 このラインは自社の事業の中でも重要な工程であることに加え、使用する設備が多く、製造ログから改善のためのデータが取得できると考えたからです。現在では、組み立て工程など、他の工程にも展開しております。

   富士通アイ・ネットワークシステムズ株式会社
      生産技術担当 爲國 氏

――具体的な取り組み内容について教えてください。

爲國氏:機械の異常検知に関してDXを進めた事例を紹介させて頂きます。

 以前は、製造設備が異常で停止した際、その内容を紙へ記録していました。復旧する為に、製造技術担当では異常の件数や傾向の分析をする必要がありますが、異常履歴を記載した紙を集め、それをExcelへ登録し直すことを行っていました。このため、いち早く異常の傾向を掴み、対策することができていませんでした。

 そこで、異常内容をタッチパネルに入力することにより、リアルタイムで状況が把握できるシステムを導入しました。データの二次活用ができるようになったことで、直ぐにパレート図等で見ることができ、現場で何が起こっているのか、把握できるようになります。(イメージは図①参照)

 その為、異常への対応スピードが上がり、製造ラインの停止頻度を減らすことに繋がりました。結果として製造ラインがスムーズに稼働することになり、納期に間に合わせるための残業が減ったという効果が出ています。

                図①

――取り組まれた背景はなんでしょうか。

爲國氏:製造ラインが複数ある中で、それぞれに異常が出てくると対応する製造技術担当の休日出勤も多くなってきて、マンパワーの限界を感じていたことが大きいです。そんな時に、DX-WGから「PLCの情報を収集できるツールがあるけど使ってみないか?」という紹介を受けたのが取り組めたきっかけです。

 製造技術担当が抱えていた課題を詳細に聞いて貰い、現状把握をしてくれたことにとても驚き、嬉しかったです。その結果、課題解決にぴったりの解決策を提案・導入支援をしてくれたことは非常にありがたかったです。

――その他の取り組み

部品受入検査工程の省人化
点検表のデジタル化
温湿度管理のデジタル化
クリーム半田の使用管理

――DXを進めた背景を教えていただけますでしょうか。

武井室長:すぐに具体的な効果はでないかもしれませんが、将来的にお得意さま・仕入先さまに対する企業価値(他社と比較する際の差別化ポイント)になると考えてDXを進めています。
実際に効果が出てくるのは 5年後6年後先になるかもしれません。ただし、目の前の小さな課題を解決していくことが重要と考えています。
大きな課題は時間もかかるし、人材の育成も必要です。大きな課題に取り組みつつも、目の前の課題を解決し、それを積み上げていくことが企業価値を高める活動になっていくと考えています。

――費用対効果など、DXを進める上で意識していることはありますか?

武井室長:どこでも同じだと思いますが、先ずは定量的な効果にこだわります。工数の削減、生産性向上などです。費用については、1年程度で回収できる効果を出せるかを検証します。
さらに定性的な効果は関係者で共有し、DXで良くなることを明確にしています。

――DX推進を成功させるポイントはなんでしょうか?

武井室長:DX推進側が一方的に押し付けるのではなく、現場のリーダーにしっかりと寄り添い、業務のヒアリングや課題・悩み(不満(笑))を聞いたうえで、新しいシステムや解決策を試してもらう。現場と一緒に改善していくことがポイントだと考えています。

 解決するにあたって従来の業務のやり方を変える場面も多く出てきます。その際は抵抗感を持つケースがあるのも事実です。そのような場合は先ほどの費用対効果のような、「いままでと比べ手間がどれくらい減るか?」というところをすり合わせ、DXがビジネスの発展に貢献することを整理し明確化した上で共有することに重点をおき活動しています。

 一番のベースになるのは、DX推進に対して現場が信頼感を持てている関係性が築けていることだと思います。現場から出てきた課題に対し、小さいことでもすぐに応えていく。当たり前かもしれませんが、信頼を積み重ねてお互いに意見を言い合える環境を作ることが重要です。

――今後の展望はありますか。

武井室長:(1)品質の向上と振れ幅の縮小、(2)工数の実態に即した適正な人の配置、(3)作業習熟度の向上の3点をDXの切り口で改善・強化していきたいと考えています。
特に習熟度の点では、映像を使った教育を進めていきたいです。技能をもった従業員がいるので、その技能を映像化し新人の方でも短期間で技能を習熟できるような仕組みを作っていきたいと考えています。

――これからDXを進めようとしている企業のみなさまへメッセージをお願いします。

爲國氏:漠然と「DX進めたいな」ではなく、「業務のどこに問題があるか明確にし、それがDXで改善できるのか?」を考えることが第一歩だと思います。その上で、なにが自社でできるのか、できないことは外部の専門家を頼ることがポイントと考えています。

武井室長:大きな課題は取り組む効果がすぐには見えづらいので、まずは小さな課題から見える化し、仮説の検証を繰り返していくことだと思っています。
また、社内でそれぞれの部門が得意分野を活かして、解決策を考えていく体制を作ることが重要です。最初から成功しないのがDXで私たちも「たくさんの失敗」をしています。まずは失敗を恐れず、身近な課題を例にとって考え始めてみることをお勧めします。

あとがき 山梨DX推進支援コミュニティ事務局

DXの推進には、「DX推進の専任担当者(部署)を配置すること」が推奨されています。現場で発生する多くの課題を専任者が早く・正確に吸い上げ、それを経営層へ伝え、解決へ繋げることで、DX推進と経営改善(経営戦略)が一体となった企業活動につなげることができるからです。

特に製造業は、現場である製造ラインの業務改革がお客様への納期や生産品質、顧客満足度(≒経営)に直結することが多いです。
我々山梨DX推進支援コミュニティでは、DXのゴールを、「顧客への提供価値を最大化するための変革」と捉えています。その為に、武井室長が行ったような「日々の業務のどこに問題・課題があるのか」という業務の棚卸から初め、その問題解決に向けてデジタル技術を用いて、業務を変革していくプロセスが重要だと思っております。

ぜひこの記事を機会に、社内で当たり前にやっている業務を見直してみませんか?コミュニティで業務の可視化から解決策までサポートさせていただきます。

山梨DX推進支援コミュニティ:小林和貴

*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2023年3月時点(インタビュー時点)のものです。
*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

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